
ウォームアップ不足が引き金となるアジリティ犬の筋肉挫傷および肉離れ(筋線維断裂)は、筋骨格超音波検査(MSK-US)で診断を確定し、早期の安静、NSAIDs、リハビリテーションによる保存的管理が基本です。重症例(Grade III)では追加画像検査(MRI)やリハビリ専門家への紹介が必要です。
アジリティ犬で筋肉損傷が起きやすい理由

アジリティ犬における筋肉損傷は、ウォームアップが不十分な場合に高リスクとされています。急性筋挫傷は筋肉内の小血管破裂による浮腫と出血、肉離れは運動中の過度な伸展と偏心性収縮時の筋力超過が主因です。
特に腸腰筋(iliopsoas)、僧帽筋、上腕三頭筋がアジリティで損傷しやすく、ボーダーコリーに高い発症率が報告されています。

鑑別診断と検査アルゴリズム
基本検査セット(同日実施)
- 身体検査:患部の直接触診(圧痛、熱感、腫脹)、患肢の可動域制限、跛行の程度評価
- 股関節可動域テスト:内旋・外旋時の痛み誘発(腸腰筋損傷の評価)
- バイタル:血圧測定、体温、脈拍(重度では全身炎症反応を確認)
画像診断
- 筋骨格超音波検査(MSK-US):第一選択。Grade I(軽度、5%未満損傷)→ Grade II(中等度、5%超+軽度線維断裂)→ Grade III(重度、著明な線維断裂)
- MRI:MSK-USで不明確な場合や手術適応判断が必要な重症例
除外すべき併存損傷
前十字靭帯(CCL)損傷、股関節病変、腰仙椎疾患との併存率が高いため、同時評価が重要です。

治療の選択肢
オプション1:保存的管理(Grade I–II)
- 安静:急性期7–14日間は運動制限、その後徐々に復帰
- NSAIDs:鎮痛・抗炎症効果により痛みと腫脹を軽減。用量は獣医師の指示に従ってください
- 冷湿布/加温:急性24–48時間は冷却、その後加温で血流促進
- モニタリング:週1回の身体検査。2週間で改善なければ画像再検査
オプション2:物理療法
- 光線療法(PBMT):週1回・6週間。跛行スコアと疼痛スコアの改善効果
- 超短波(TECAR):深部筋層への加温療法
- リハビリテーション運動:段階的な可動域運動、筋力増強
- モニタリング:4–6週ごとにMSK-USで線維再構成を確認
オプション3:手術的介入(Grade III)
筋線維の著明な断裂、または6–8週間の保存的管理後も跛行が改善しない場合に適応。術後8–12週で運動復帰を判定します。

治療プロトコルとタイムライン

- 0–24時間(急性期):安静・固定、NSAID開始、冷却パック(15–20分、1日3–4回)
- 1–7日:MSK-US施行でGrade確定、軽度運動(短時間のリード散歩)
- 1–4週:リハビリ運動開始、物理療法検討
- 4–8週:段階的な運動復帰、MSK-US再検査
- 8週以降:アジリティ復帰判定、ウォームアップ・クールダウンプログラムの確立
回復目標とフォローアップ
- 目標値:圧痛の消失、跛行スコア0、患肢への体重分散正常化
- 再評価時期:初診後7–14日、その後4週ごと
- 復帰の目安:軽度は80%が6週間以内に競技復帰、中等度は8–12週
- 長期フォロー:復帰後も月1回の身体検査で再発モニタリング
飼い主が知っておくべきポイント

- 適切な安静・運動制限により多くは4–8週で回復
- 在宅管理:患肢への過負荷禁止(階段上下、飛び降り制限)、リード散歩のみ
- 復帰基準:獣医師の許可なくアジリティ訓練を再開しないこと
予防と実践的ヒント

- ウォームアップ:運動前5–10分、散歩+トリック(股関節・脊椎の可動域向上)
- クールダウン:運動後の軽い散歩と静的ストレッチ
- 冬季は特にウォームアップ時間の延長を推奨
- ボーダーコリーは再発リスクが高い。再発予防プログラムの強化を
参考文献
- PubMed 36964029
- PMC5600973
- PMC9312226
- PMC7438591
- Frontiers in Veterinary Science
- PMC8772780
- PMC12286276
- PMC9305456
- PMC10215327
- Veterinary Evidence
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