
アジリティ犬(主に小型〜中型犬)で頻発する慢性肩部腱障害。ジャンプ着地時の前肢体重負荷(体重の60%)と垂直力(体重の4.5倍超)が主因です。
棘上筋(Supraspinatus)と上腕二頭筋(biceps brachii)は着地伸張で偏心収縮し、反復負荷で微小損傷が蓄積。肩屈曲増加や着地角度不良で悪化します。
なぜジャンプの着地で肩に負担がかかるのか

ジャンプ着地時の前肢体重負荷(体重の60%)と垂直力(体重の4.5倍超)が主因です。着地の瞬間、棘上筋と二頭筋腱は強い伸張ストレスにさらされ、偏心収縮によって微小な損傷が蓄積していきます。
正常な肩角(110‒120°程度)を維持することが重要で、この角度が不足している場合や、着地フォームが崩れている場合は、腱への過負荷リスクが高まります。
症状:こんなサインに気をつけて

原因は反復外傷(アジリティ特異)、形態異常(肩角不足)、筋不均衡です。二次的変化として肩関節不安定や軟部組織炎症が生じます。
日常生活やトレーニング中に以下のサインが見られたら、肩部腱障害の可能性を疑いましょう。
- 着地後の跛行 — ジャンプ着地後に前肢をかばう跛行が見られる
- 躊躇する行動 — 障害物(特にジャンプ)を前にして躊躇する行動が増えた
- 肩の圧痛 — 肩関節を触ると痛がる・嫌がる反応がある
- 異常な座り方 — 前肢を横に投げ出すような異常な座り方をする
緊急目安:跛行が持続する場合や体重を支持できない場合は、すぐに動物病院へ連絡してください。
獣医師による診断方法

同日基本検査セット:触診(痛み/圧痛)、可動域評価、X線(骨性変化確認)、超音波(腱肥厚/断裂評価)。正常肩角(110‒120°程度)を基準に変形確認します。
着地痛持続時はMRI(軟部組織詳細)を実施します。筋電図でsupraspinatus/biceps活性異常確認(着地フェーズ高活性)も有用です。
触診・可動域評価では、肩関節の圧痛部位を特定し、屈曲・伸展・外転の可動域を評価します。
X線検査では、骨性変化(骨棘形成、石灰化など)を確認します。慢性例では腱付着部に骨棘が形成されることがあります。
超音波検査では、腱の肥厚・断裂・石灰沈着などを直接評価できます。棘上筋腱炎では腱の肥厚と低エコー領域が特徴的な所見です。
治療の選択肢

オプション1:安静・リハビリテーション
保存療法の第一選択として、負荷軽減(ジャンプ中断4‒6週)を行います。段階的な負荷再開(水中トレッドミル等)を経て、痛みの消失・着地歩行の正常化を目標に、2‒4週ごとに再評価します。改善が見られない場合は外科的介入を検討します。
オプション2:NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)
炎症・疼痛管理に使用します。2‒4週間の投与で漸減していきます。消化器症状の監視と腎機能のモニタリングが必要です。
用量は獣医師が判断します。必ず指示に従ってください。
オプション3:注射療法(PRP/ステロイド)
慢性難治例に適応される治療法です。超音波ガイド下での腱内注射を1‒3回、4週間隔で実施します。超音波による再確認(4‒6週後)でモニタリングを行います。
回復タイムラインと経過観察

- 0‒15分:安静固定、冷罨法
- 15‒60分:触診/画像評価
- 1‒6時間:鎮痛開始、リハビリ計画立案
- 6‒24時間:軽負荷歩行確認
- 24時間以降:漸進的アジリティ復帰(ジャンプ高を低減)
回復目標値:肩可動域の正常化、着地時の筋活性安定(EMG)、腱厚の正常化(超音波)。再評価は開始後2週、以後4‒6週ごと。競技復帰までは通常3‒6ヶ月を要します。
予防と実践的ヒント

- 肩角改善エクササイズを日常的に取り入れる
- 着地テクニックの矯正(初心者犬は特にリスクが高い)
- 併発症状(腸腰筋損傷など)がある場合は同時にリハビリを実施
- 高齢犬・大型犬は負担が増すため、低負荷から開始する
- トレーニング記録(頻度・ジャンプ高さ)をつけて管理する
着地負担部位(肩腱)への意識を高め、必要に応じてジャンプの中断や高さの調整を行うことが、長期的なパートナーの健康を守る鍵です。
参考文献
- PMC7606876
- PMC5341356
- PMC6874169
- PMC8833498
- PMC8772780
- PMC12656450
- PMC11275737
- PMC11608172
- PMC9624126
- PMC8533011
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